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野球に変化をもたらすテクノロジー

2019.5.21

日本で9年、アメリカで19年、通算28年間の現役生活に終止符を打った日本のレジェンド・イチロー(元マリナーズ)。

現役最後の試合は、今年3月21日超満員の東京ドームで行われた。試合後開かれた記者会見は、多くの野球ファンの心に焼き付いているのではないだろうか。

 

その中の言葉に「2001年にアメリカに来てから2019年現在の野球は、まったく違うものになりました。頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつあるような」というものがあった。そしてアメリカのテクノロジーの進化は止まらないが、日本の野球は自分の頭を使うものであって欲しいという内容だった。

 

アッパースイングが否定から肯定へと変化したように、いつしか野球のセオリーにも変化が起きている。

野球はデータが重要視される時代になった。

 

メジャーリーグやスポーツメディアが使用しているセイバーメトリクスは、データを統計学的に分析し、選手の評価や戦略を考える分析手法として広まっている。日本でも話題になった映画「マネー・ボール」は、弱小チームがセイバーメトリクスを使って野球界に革命を起こした実話が元になっている。

 

そこから見るメジャーリーグ野球はテクノロジーによって大きな進化を遂げ、データによる野球は本来の野球を嘲笑うかのように好成績をもたらしている。

 

しかしそんなイチローも危惧するほどデータ野球が浸透する中、一人の日本人がその常識を打ち砕こうとしている。

大谷翔平(エンゼルス)、24歳。

 

メジャーに移籍した1年目に早くも二刀流の才能を見せつけア・リーグ最優秀新人選手賞(新人王)を獲得。そして今シーズンも試合に出るや否や特大ホームランを放ち全米を圧巻している。

 

まさに日本の宝と言っても過言ではない大谷翔平。正確な統計を出すセイバーメトリクスの想像を超える身体的柔らかさ、テクノロジーからはじき出されたデータにより投じられた内角への速球にも、肘を畳み体の回転によりスタンドに運ぶ器用さはデータを測定していたとしても簡単に打ち破ってしまう。それが昨シーズンの結果に出ているのではないだろうか。

 

テクノロジーが進化し、様々な情報を知ることが出来るのは野球ファンからすれば嬉しい時代となった。しかし一方で、理屈では表せない魅力がスポーツであり、テクノロジーでは解析できない駆け引きやイレギュラーな魅力が感動を呼ぶ。日本の若き侍がテクノロジーに打ち勝ち、野茂英雄、イチローに続く歴史を作って欲しいと筆者は願っている。

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